冬枯れのオブジェ

 

「冬枯れ」とは寂しい冬景色の表現に用いる季語だそうだ。

冬、雪、樹氷、霧氷などが日本の詫び、寂びの世界に通じるのだろう。

10月の紅葉を終えて、その年を着飾った葉や実をすべて落とした木々の

素の姿は圧巻だ。曲がりくねった枝、太い幹に絡みついた蔦、そして実を

落とした鞘だけ残った小さな枝、寒い冬に耐えている硬い芽など、普段、目に

するこたができない自然界の掟を我々に見せてくれる。

朽ち果てた幹や枝に絡みつき、大木をも枯らしてしまった太い藤の幹など

市街地から少し離れた里山でも、冬枯れのオブジェとなって季節の移り

変わりを存分に楽しませてくれる。

特に、人の手が入らなくなって荒れ果てた里山は、自然界の生存競争と

生き方を我々人間に「耐えれば、必ず春がやってくる」と教えている

かのようだ。寒さから一年の内の半分を、じっと耐えて、冬枯れの

景色に彩を添え、可憐な花びらがぼつぼつ開きだし、周囲に甘い香りを

漂わせてくれる季節までカメラを向けてみた。

春を迎えて一斉に花をつけ、新緑の葉を纏い、夏にはたくさんの実をつけ

収穫の秋を迎え、また冬枯れを忘れることなく毎年繰り返す。

そんな冬の里山模様を三年間追い綴ってみた。

 

                              2020年2月

 

                              笹崎 正明