「私的写真考-1

 

  写真を始めて飽きずに21年が過ぎた。リバーサルフィルムでの撮影に始まり、デジタルの

時代を経て、ここしばらくはモノクロフィルム撮影が大部分だ。

今では珍しい写真を撮る写真家とみられているような時代となってしまった。

今日、私の写真仲間が突然来て2時間ほど写真談義をした。

その中で、ほとんどの話は、デジタル写真とアナログ白黒写真の相違の話題で終わった。

結論から先に言えば、「改めてアナログ白黒写真を再度始めてみたい」とのこと。

理由は、デジタルには無い奥深い白黒の諧調のようだ。

私のアナログモノクロ写真を始めたきっかけは、実にいい加減な発想からである。

仕事を引退し、年金暮らしのうえ、体力的な問題で撮影半径が狭ったこともあり、出来るだけ

出費を抑える手段として白黒アナログ写真を始めたのだ。

10年ぐらい過ぎて、やっとモノクロの価値がわかってきたような気がしている。

当時は、フィルム、印画紙とも、今と比べてかなり安かった。カラー写真は、撮影後は自分の

手を離れ、ラボのテクニック任せで、仕上がりを見て自分の実力不足も知らず、ラボ仕上げの

批評をしたりしていた。

かなり高価な道楽だったのだ。カメラも多くの機能を搭載し、「そのカメラを購入し撮影すれば

誰でもプロ並みの写真を撮れる」と扇動された時代だった。

その機能も、ほとんど使うことはないから不思議である。ただ単に高級カメラとして需要を延ばす

ための手段として利用されたのだろう。

雑誌も同じように繰り返しリバーサルフィルムの露出などの記事が満載だった。

記事もしかりで、風景、祭り、花、モデル撮影、カメラ・レンズなどの比較がほとんどで、途中から

雑誌は見ないことにした。

今では化石となったモノクロフィルム写真の記事など、見つけることなどは難しくなったのだ。

これらも業界の時代の変遷と理解はしているが、寂しいことだ。ましてや、現在はデジタルの真っただ

中で益々寂しさが増してくる。

しかし、過去に9回の個展開催の内、約半分をモノクロフィルム写真を展示してきたが、来場者の声が

私を励ましてきたのだ。「やっぱり白黒写真はいいねその一言が私を励ましつづけたのだ。

 かくして、「貧者の知恵」として始めたモノクロ白黒写真が私の主力作品になった。

勿論デジタルも使用しているが、年に2回程度しか使用せず使い方を忘れてしまうこともある。

便利だが味がないような気がする。先に紹介した友人は、「手を掛けるほど、いい写真になる」

強調して帰ったが、私も全く同感だと思っている。

 

                                          2018年6月

                                     

                           公益社団法人 日本写真協会会員 笹崎 正明