「道楽写真家の独り言-2」

 

 

 リバーサルフィルムでスタートした我が写真人生、紆余曲折の連続だった。

写真を始めて3年目だったと思うが、全日写真連盟が主催するする「21世紀に残す日本の自然」

公募展を知った。随分悩んだ末、応募してみた。

応募した作品(当時はただの写真だったが)は、山形県尾花沢市の銀山温泉にある小さな滝を

撮影したもので、当初の目標は、その隣にある苔むした岩肌だった。

しかし、35mmカメラでの苔表現は私の技術では無理だった。

 

何回撮っても苔の機微の表現は難しく、隣の滝をターゲットに切り替えた。

少々時間をかけて、「どう撮ったらいいか」考えた。

「流れ落ちる水を霞のように、滝つぼ付近で咲き揺れ動く花を表現できれば大成功」だと考えた。

カメラは645の中判に切り換え、撮影に及んだ。

 

朝早く仙台を出て、撮影後仕事をして、現像依頼し確認すること数回、中々イメージとはほど遠い

毎日が続いた。5日ほど通い、やっとイメージに沿った作品が出来上がった。

ラボの展示場での展示を依頼されたが、お断りさせてもらった。

発表してしまったらコンテストに応募不可となってしまうからだ。

応募要項には、「未発表に限る」旨の表示がある。やっとの思いで、初の全国公募展への

応募にこぎつけた。

写真を始めて3年目でやっと入選の知らせが届いたから驚いた。

 

その後、この写真が、朝日新聞社説の隣に掲載され、雑誌で発表された。

また、フランス藝術アカデミー理事長から「21世紀を代表する抽象写真家の一人」との

評価があった旨の連絡を受けた。

その後も、写真の一人歩きが続き、スペインのバルセロナにある、あの有名なアントニオガウデイの

サクラダファミリアでの展示依頼まで舞い込んできたのだ。

私は前年ドイツ、フランス、スイスへ3週間の撮影旅行を終えたばかりなので、丁重にお断りした。

 

恐ろしいことでもあり、かなりの写真人生の励みにもなった。

 

そのころから、あまり見たことのない風景、カレンダー・雑誌などで見ない風景を撮影することの

難しさを感じるようになってきた。

そのうえ、夜討ち朝駆けの風景写真撮影に対する体力と気力の限界がひしひしと迫ってくるのだ。

また、人と違った写真を撮ることは至難の業だった。

暫くして風景写真から遠ざかることになってしまった、以来風景写真は殆ど撮影していない。

 

 そのころ、自宅の建て替えの話が出て、外に撮影に行くことが少なくなってきた。

困り果てて考えたのが、自宅に居ながら撮影する方法だった。

ラボのアドバイスもあり、始めてみたのが、テーブルフォトだった。

余っている一部屋のカーテンを閉め、照明には懐中電灯、白熱灯、蛍光灯を組み合わせ、

色付けにセロファンを使い自由気ままに撮影し、すぐラボに行き、現像上がりを待って持ち帰り、

不満が残るものは、その場で撮りなおす毎日が続く。

楽しく充実した毎日だったような気がする。

 

ようやく満足な写真を撮れるようになり、多くの全国公募展に応募し、次々と入選することが

出来るようになってきた。

雑誌「フォトコンテスト」にも一年間毎月のようにコンテスト入選者として掲載されたのだ。

当時は、「コンテスト荒らし」を私のモットーとして充実した毎日を送った思い出がのこる。

その間、建て替え住宅も完成し引っ越したが、私のテーブルフォトスタジオ(?)も当然のように

無くなってしまった。

  

                                       2018年7月

 

                       公益社団法人 日本写真協会 会員 笹﨑正明